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造形療法の特徴と事例|心がダイレクトに現れる心理療法

2017年9月4日

心理カウンセラーの井上です。

造形療法とは、粘土を使って心のイメージを自由に現し、作成された作品を通して会話をすることで、心の深い部分を見つめていくことが出来る心理療法です。

芸術療法の1つですが、作品の上手い下手は一切関係なく、自由に作ってもらうのがポイントです。

特徴としては、他の絵画療法コラージュ療法(雑誌の切抜きを1枚の用紙に貼り付ける療法)と比べて、心がダイレクトに現れるという点です。箱庭療法やコラージュ療法は、様々なものを選択できますが、造形療法は自分自身で作り上げていくものですので、ダイレクトです。

ちなみに当スクールの造形療法では、皆さんが普段あまりやらない事、やりたくない事をテーマに粘土で作品を作ってもらっています。

どんなテーマかというと、ネガティブな感情のイメージです。

つらい、苦しい、悲しい、寂しい、憎い、腹が立つといったネガティブな感情は、普段の生活では出しづらいものです。それを感じると、嫌な気持ちにもなるので、出来れば遠ざけておきたいものでもあると思います。

でも実はその感情がクリアになると、心がスッキリとしたり、なりたい自分、望む自分が見えてくることもあるんですね。

↓の作品は、先日実施した実践心理カウンセリング講座の造形療法で、ご自身のネガティブな気持ちを振り返ってもらった後に作った「幸せなイメージ」の造形です。

造形療法の作品|受講生Rさん

Rさんの造形療法の作品

ハートが円形のものに守られているイメージ、上には周りの人が笑顔でいるイメージを作られています。周りの円状のイメージをお伺いした後、それが出来上がるためには何が必要なのか、具体的にどうすれば良いのかを一緒に考えていっています。

会話を進めていくうちに、「円状のものは、もっと大きいほうが良い!」と言われたので、実際に手を加えてもらい、写真の作品はマイナスのイメージから作り直したものより、さらに一段階円が大きくなっています。

ネガティブな気持ちを振り返ることなく、いきなり「幸せなイメージ、なりたい自分のイメージを作ってみて下さい」とお伝えして作ってもらうと、この形にはならなかったと思うんですね。

ネガティブな気持ちを出したり振り返るのは苦しさもありますが、どんな事がどんな風にしんどかったのか?を振り返っていくと、そこから「自分自身どういった状態を望んでいるのか?」が見えてくることも多いです。

実際に受講された方のご感想を紹介します。

ご感想|岡山県倉敷市 女性 Rさん

Rさんの造形療法受講の感想

最初は何をつくっていこうかイメージができなかったですが、先生に話を聴いてもらっていく中で楽しみながら造形でき、悲しい思いから、だんだん自分の中にある前向きなイメージで作品ができました。目に見えないものを形にする中で、自分にはこういう思いがあるんだと理解ができて、勇気がわいてきました。

他のケースを紹介します。

マイナスの感情を表現したケース

カウンセリング講座・造形療法作品A

造形療法作品例 グループセッション前

作品から心を客観的に見ることができます。板に穴が空いているイメージ。

なぜ穴が空いたのか等、造形のイメージをしっかりお伺いした後、他の参加者から新たに造形をプレゼントして頂いてます。

他の参加者からプレゼントされた造形

他の参加者からのプレゼント

↓プレゼントを受け取った後、あらためて造形を作成し直すと・・・

造形療法作品B

グループセッション後

写真は、身近にいる仲間を思い出したイメージです。グループでの会話後、改めて作成することで心の変化を感じられます。

職場や家庭等、普段過ごしていると、言い返したいけれど我慢したり、やりたくない事だけれどやらざるを得なかったり、思ったように物事が進まないこともあります。

それでも笑顔でいないと物事がうまく回らなかったり、身近な人にはなかなか言えない思いが出てくる事も。

特にイラ立ち、さみしさ、不安等のマイナスの感情は出しにくいですし、あまり感じたくないものです。

造形療法では、言葉にしにくい感情を粘土で形にします。そこから感情を浄化させることがどういうことか、掴んで頂けます。

ご感想|岡山市 40代主婦 Tさん

芸術療法とはどういうものなのかなぁと思い、受講させて頂きました。今日は紙粘土で色々な心の中の物を創り出して、今の自分の本当に感じたり思っていることが形となって如実に現れて、思わず涙が出てしまいました。

芸術療法とはこういう目に見えないものを形にして、今の自分に気付くことが出来るすばらしい療法だと思いました。

上の感想を頂いたTさんが始めに造ったのは、↓の写真の左上のまるい形の造形のみです。そのイメージについてお伺いすると「もやもやしているもの」。

その下のソファのような台と星は、グループセッション後の他の参加者からのプレゼント造形です。

カウンセリング講座・造形療法作品C

そのプレゼントをもらった後にさらに造形すると・・・

造形療法作品D
Tさんとご主人さん、ご兄弟が笑顔でいるイメージ。

私自身の事例

私自身カウンセラー研修生時代に、漠然とした不安を抱えていた時にカウンセリングを受けたんですね。そこで受けた造形療法の事例です。

紙粘土を使い、

今の心の形を表現してみて下さい

と言われ、じっくりと考えながら作成しました。

作成してみるとこんな形に。

造形療法の作品-枠状の粘土と小さな球

適当に思いのまま形にしたので、自分でもなんでこんな形になったのかはよくわかりません。会話をしていくうちに、四角の枠のようなものは、「人と同じようにすること」のイメージがわいてきます。

「人と同じようにすること」からさらに連想すると、このままカウンセラーを目指すのではなく、他の多くの人と同じように会社員として働いたほうが安定していていいのではないか?と普段感じている思いが出てきます。

そうこうしているうちに、カウンセラーから

「この作品の中でどんなところが1番気になりますか?」

と聞かれたんですね。気になるのは手前の他のものとほとんど触れ合っていない、小さな丸状の粘土です。

それについて話をしているうちに、なんとなくその小さなものが今の自分とリンクしてきたんですね。小さなものだけ他との接地面積が少ないので、寂しい感じもします。

「自由にしていいですよ。」と言われたので、その小さなものを枠状のものの上に置いて接地面積を増やしてみます。

小さな造形を大枠に重ねる

やってみると、全然しっくりきません。現実に置き換えると「他の人と同じようにする(会社員として働く)」イメージです。

他の方法で接地面積が増えるように、新しい包み込むようなものを付け加えると少し落ち着く感覚があります。

小さな造形を円状の粘土で包み込む

それでもまだしっくりこない感覚があったので、思い切って枠状の粘土から距離を大きく離してみました。

小さな造形を大きな造形から離した状態の写真

この形が1番しっくりきたんですね。自分でもとても意外でした。いわゆる「他とは違う」ことをしている状態ですが、その自分のほうがしっくり来ることが造形療法で実感として持てました。

始めは「漠然とした不安」だったのが、カウンセリングを通して「他の人と違うことをするのが不安」という事が明確になり、会話を進めるうちに実は他の人と違うことをしている(カウンセリングを仕事にする)ほうがしっくりくる感覚がおもしろかったです。

もちろん、他の人と同じようにするほうがしっくりくる人もいると思うんですね。

大事なのは、何が自分自身にしっくりくるのか、どんな風に過ごすことが自分にとってより良いのかを把握することだと思います。

まとめ

造形療法は、心を立体的に現したモノから会話していくことで、自分自身の思いもよらない一面を発見できたり、ストレスの原因となるマイナスの感情をクリアにできたり、自分自身を客観的に見ていくことができます。造形の上手い下手は一切関係ありません。

マイナスの感情だけでなく、

  • 今の心の形を明確にする
  • 未来の形を創る

等のテーマで行う事も可能です。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

ジョイカウンセリングスクール代表。福岡にて心理学・コミュニケーションセミナー、心理カウンセリングを実施。2004年よりプロとして活動してます。プロフィール

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