箱庭療法では、気になる人形やグッズを選び、砂の形も自由に作り、そこに選んだグッズを自由に置いて1つの世界を作ります。その作品を通して心の深い部分を見つめていくことが出来る心理療法です。
通常、下の写真の作品のように砂で湖や川のイメージを作ったり、何らかのグッズを選ばれる方がほとんどです。
とはいえ、箱庭療法をお勧めして、あえて全く何も選ばない・砂も触らない方がいても不思議はありません。この記事では、箱庭療法で何も置かなかった時の分析・解釈方法を解説します。
1 何も置かなかった理由から会話を深める
箱庭療法も心理カウンセリングですので、何かを置こうがそうでなかろうが、そこから会話を深めていくことに変わりはありません。何も置かなかった理由を話された場合、そこから理解を深めていくことが出来ます。
例えば、以下のような理由で何も置かなかったとします。
- 平である事が大事で、平になるなら砂が全く無い状態でも良かった
- 小物を置かなかったのは、何かを置くと邪魔な感じがして綺麗に見えないから
とにかく平らであることと、邪魔なものがない綺麗な状態であることを大切に思われています。
なぜそのように思われるのか?という観点から次のような質問をすると、その人自身への理解がより深まります。
- 平らになった状態を見てどうですか?
- この箱庭の世界は、できてからどのくらい経ってそうですか?(さっき作りましたという現実的な事ではなく、箱庭を1つの世界として捉えた上で)
- この箱庭の世界は、平らになってからどのくらい経ってそうですか?
- この箱庭の世界は、平でない時期はありましたか?→あればその時の事を詳しく話してもらう。さらに平らになった経緯も。
- 平らでなかったらどんな感じがしますか?→なぜそのような感じがするのか詳しく教えてもらえますか?
- 何かを置くと邪魔になる感じがして何も置かなかったんですね。「邪魔になる」ということで他に何か思いつく、連想することはありますか?
2 今はあまり自己表現したくない・自分を出したくない
上記の方のように「何も置かない」理由を明確に話された場合は、「何も置かない事が自己表現」という事が伝わってきますが、そうでない方もいらっしゃいます。
例えば絵画療法をグループカウンセリングで取り入れると、たまに描かない(描けない)方もいらっしゃいます。箱庭は絵よりも表現しやすいのですが、何も置かない・砂も触らないということでしたら「自己表現が苦手・したくない時期」という仮説も立てられます。
幼い時に騒いだり泣いたりした時にきつく怒られる事が重なると、自分を表現しちゃダメなんだという思いが根付くことがあります。自己表現が苦手だとうつにもなりやすいです。
今は自己表現したくない時なんだなと受け止めることが大事です。
ちなみに芸術療法の中で表現しにくい→表現しやすい順に並べると、
- 絵画療法
- 箱庭療法
- コラージュ療法
になります。コラージュ療法は1つの作品を作るのに初めての方であれば60分近くかかりますが、雑誌などの切り抜きを自由に切って用紙に貼り付けるだけですので、最も取り組みやすい芸術療法です。
3 とにかく疲れている状態
眠れない日が続いたりすると、今は会話をして問題解決するというよりは、とにかく休みたい・リラックスする事が必要という時もあります。
箱庭療法で全く何も置かないのでしたら、会話するのも難しいくらい疲れている時かもしれません。
もしその方を見てそういう状態だと判断できれば、箱庭療法は無理に進めるのではなく、自律訓練法などでリラックスを作っていくことのほうが大切です。
まとめ
箱庭療法で何も置かなかった時の分析方法として
- 何も置かなかった理由から会話を深める
- 今はあまり自己表現したくない・自分を出したくない時期
- とにかく疲れている状態
の3つを紹介しました。
最後に心理カウンセラーであれば当然のことを記載しますが、最もやってはいけない関わりは、何かを置くべきという何も置かない状態のクライアントを否定する関わりです。
また、箱庭療法はカウンセリングで必ずやらなければならないものではなく、強制すれば当然ながらラポール(絶対的な信頼関係)が壊れます。
いずれにせよその方自身をよく見る事が大切です。