「漂流」吉村昭(著)
いやー、すごいですこれ。一気読みしました。
江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。
読後感もとてもスッキリです。読んで元気をもらえること間違い無しの本!
生還出来るとはとても思えない場所
- 水が一切湧いてない
- 船を作る木も生えてない
無人島に、ほぼ着の身着のままで漂着してます。乗ってきた船も着岸後、壊れてしまってます。
どうやって戻れたのか?という疑問が読みながらふつふつと湧いてきます。島の周りに他の船は一切通らず、通りかかった船に助けられたわけでもないんですね。
状況があまりにも絶望的なので、島に漂着した他の人の中には自ら命を絶つ者も。
生還した人も、「特別な人」という感じはしません。
ただ、「生きる」ために出来る最大限の工夫をし続けた結果、生還に繋がったという感じです。
読みながら主人公の寂しさや切なさもひしひしと伝わってきます。読むだけで自分の中のそんな気持ちも癒やされるような感じがします。
他の海難事故からの生還ノンフィクション
たった一人の生還― 「たか号」漂流二十七日間の闘い
37日間漂流船長―あきらめたから、生きられた
も読みましたが、この「漂流」が一番インパクトが強かったです。
「生きる知恵・力」以外にも見えてくる事
他にもこの本からは、
- 江戸時代の結婚感、結婚の仕方
- 江戸時代の人と人とのかかわり方
- 江戸時代に漂流船が異様に多かった理由
なども見えてきます。
私はてっきりこの頃はお見合い結婚ばかりかと思っていたのですが、そうでもないんですね。
高知に生還した人のお墓と記念碑があるのですが、そこに拝みに行きたい気持ちにさせられました。本当に凄まじいノンフィクションです。ちなみに読み終わった後は、私は魚介類が食べたい気分になりました。