コラージュ療法

コラージュ療法のやり方と解釈方法|事例を交えて解説

2014年1月15日

コラージュ療法実施風景

コラージュ療法とは、雑誌やカタログなどの気になった切り抜きを集め、それを1枚の用紙に好きなように貼り付ける心理療法です。特徴として、芸術療法の中で最も取り組みやすく、見栄えの良いものが作りやすいです。

主に心理カウンセリングで使われますが、特に悩みが無い人がやっても心の深い部分が現れたり、気付いていなかった願望、問題点などが見えてくることも多々あります。

この記事ではコラージュ療法のやり方、解釈方法、メリット・デメリットなどを解説します。

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コラージュ療法とは

コラージュとは、フランス語で「貼り付ける」と言う意味です。1980年代くらいから使われており、比較的新しい芸術療法の1つです。

起源についてはあいまいで、絵画療法から派生したと言われていたり、箱庭療法のグッズを持ち歩くのが大変なため、作られたとも言われています。日本では、

森谷寛之氏(当時愛知医科大学, 現在京都文教大学) が、1987年5月頃に持ち運び可能な箱庭を考えていてコラージュの発想につなげた

引用元:高江洲 義英/編 入江茂/編、コラージュ療法・造形療法、岩崎学術出版社、2004、9p

とされています。

心理療法としては比較的新しく、目的としては、「自己理解を深める」「なりたい自分を明確にする」ために行うことが多いです。カウンセリングで実施する際は、コラージュの例や効果、目的、作り方など、簡単な説明をしてから行います。

やり方

準備物として、以下のものが必要です。

  • 写真入りの雑誌やカタログ
  • はさみ、のり、A3用紙

雑誌の数は、50冊程度あるとベターですが、2.3冊でも作成する事はできます。可能であれば、作成者の方に切り抜いてよい雑誌を持ってきてもらうと、より満足度の高いコラージュが作りやすいです。

台紙となる用紙に決まりはありませんが、A3用紙くらいの大きさが適切です。なければA4用紙を2枚貼り合わせてもOKです。

やり方は、まず雑誌から自分自身がセレクトした切り抜きを集め、その後用紙にその切り抜きを好きなように貼り付けていきます。切り抜きはハサミで切っても、手でちぎってもOK、人でも自然物でも文字でも何でもOKです。

コラージュ作成のテーマですが、シンプルに雑誌の中から気になったもので作っても良いですし、なりたい自分をテーマに作っても良いです。一般的には「気になったもの」のほうが作りやすいです。

嫌いなものをテーマに作る事もできますが、このテーマで作る場合はカウンセラー同席のもとで実施するのをお勧めします。作るだけで心の体力をかなり使います。

セミナーで実施する際は、参加者に作成してもらう前にご自身が作成されたコラージュの作品を紹介し、それからどんな気付きが得られたかを簡単にお伝えするのも良いです。

グループでのコラージュ療法実施風景

グループでのコラージュ作成風景

注意点3つ

1 切り抜きを集めてから貼り付ける

作り方ですが、切り抜いてそれをすぐに用紙に貼り付けるのではなく、切り抜きをある程度集め、それを用紙のどの位置に貼り付けるのが良いかシュミレーションした後、最後にのりで貼り付けるのが良いです。

貼り付ける位置で作品の印象が大きく変わるためで、この方法だとしっくりくる位置を確認しながら作成できます。また、集めたけれど使わない切り抜きがある場合、それを見極められます。

2 時間は区切らない

作成時間の目安は、伝えない方が自由に取り組めます。(仮に聞かれば場合は伝えればOKです)

3 評価しない

完成したコラージュについて、良い悪いの評価はしません。これは他の心理療法と同様です。良い悪いはありません。

自由に作ってもらい、それについて自由に話してもらうのが適切です。

解釈(分析)の観点

以下はあくまで心理学的・統計学的な分析の観点です。必ずしもあてはまるものではありませんが、当てはまっている事も多いです。参考までにどうぞ。

グリュンワルドの空間図式

次の図はグリュンワルド(Grünwald)の空間図式とよばれており、コラージュが貼られた場所から分析の参考にするものです。

様々なバリエーションがあり、箱庭療法、絵画療法にも同様に使えます。

各位置の分析の心理学的な観点の説明図

  • 右上:未来、社会に対してのイメージ
  • 右下:家族・家庭のイメージ
  • 左下:その人の原初的な力
  • 左上:思考・価値観、宗教観
  • 中央:核(その人の核のイメージ)

参考文献:杉浦京子/編 金丸隆太/編、はじめての描画療法、新曜社、2018、55p

実際の作品を通して、具体的な解釈方法を解説します。

気になる切り抜きから深める方法

↓は当方主催の心理セミナー受講生の方が作られたコラージュです。

コラージュ療法作品 Aさん

コラージュは作るだけでスッキリ感を得られるのですが、作品を通して会話することでさらに理解が深まります。

どの切抜きが一番気になるのか?なぜその切抜きを選んだのか?という観点でお伺いすると、様々なことが見えてきます。

例えば上のコラージュの左下にリングがあります。このリングを貼られた方にとって大切なのは、リングの下にあるリングの影とのこと。「影があることで一面だけではなく、全体が見れる」と。

作品の上の方には、上空から見た島もあります。「一部分だけではなく全体を見る」というキーワードを、自分の作ったコラージュの中から見つける・確認していくことが出来ます。

切り抜きのその人自身にとってのイメージが大切

作品を分析する時にユング心理学の考え方も参考になりますが、最も大切なのはその人自身が感じるコラージュ・切り抜きのイメージです。

左上の水族館や、この方にとっての海のイメージ、橋のイメージ、靴や寝袋のイメージをお伺いしましたが、共通しているのは、新しい行動を起こしたいという思いでした。

休息や癒やしが大切な時期もありますが、この方にとって今大切なのは、動く・新しい行動を起こす事。作品から会話を深めていくことで、無意識を言語化できます。

誰かにそれを教えてもらったり与えてもらうのではなく、自分自身が作った作品から無意識で感じていることを発見・確認することが出来るのがコラージュ療法のおもしろいところです。

この方のご感想を紹介します。

コラージュ療法受講感想

他の受講生の方が作られたコラージュを紹介します。

余白の状態を見る

コラージュ療法作品2

この方は、ご自身の希望でまず「自分が嫌だと感じるイメージのコラージュ」を作られ、その後にそれが癒されるコラージュを作って頂きました。上の作品は癒されるイメージのコラージュです。

このコラージュについても、なぜこの切抜きを選ばれたのか?この切抜きのどんなところが気になったのかをお伺いすると、その方が大切にしたいことが見えてきます。
 
私自身今まで300以上のコラージュ療法の作品を見てきましたが、実はこういった非常にシンプルなコラージュを作られる方は多くありません。

この方にとって、真ん中の切り抜きも大切ですが、その周りの余白の意味もとても大切なものだと感じます。

予定をギチギチに詰め込むのではなく、心も体も余裕を持たせたい、または人との距離感を保ちたい、シンプルさを重視したいといった思いが現れています。

↓は余白がほぼ無いコラージュです。

余白の無いコラージュ作品

22作目

うつ病の方が回復期に作られた作品で、久しぶりにアルバイトを開始して大変だった思いが現されています。

このコラージュをよく見ると、枠に関するものが非常に多いです。枠はコラージュに限らず、アートセラピー全般でも大切なキーワードです。詳細はうつ病を克服するまでのコラージュ療法33枚の記事で作品を通して解説してます。

コラージュ療法のメリット・デメリット

メリット4つ

1 作りやすい

他の芸術療法と比較して、コラージュは圧倒的に取り組みやすいです。

絵画療法は絵を描くのに抵抗を感じる方がおられますし、箱庭療法は砂箱やグッズなどの専用の道具が必要で、気軽にはやりにくいです。

コラージュは雑誌と白紙、ハサミとのりという誰しも持っているもので出来ますし、切り抜きを集めて貼るだけですので取り組みやすいです。

2 見栄えの良いものが作りやすく自己肯定感に繋がる

ここがコラージュの一番の特徴です。絵画療法や箱庭療法ではいわゆるカッコ良い・綺麗なものは作りにくいです。

コラージュ療法だとプロが取った写真から気になったものを集めて独自の世界を作ることで、非常に満足のいく作品を作れます。そういう作品が作れた・現せたという自己肯定感に繋がります。

思うまま、感じるがまま心を自由に表現しつつ、独自性のあるものが作れます。

3 楽しみながら出来る

コラージュをやってみると実感出来るのですが、作っていくうちに楽しくなってきます。これは制作過程自体が、破壊(雑誌を切り抜く)と再生(切り抜きから新しい作品を作る)であることも関係しています。

4 保存出来る

コラージュは箱庭療法と違い、保管が可能です。後からそれを振り返ることで改めてどんな風に心が変化してきたかを実感出来ます。私自身20年前に作成したコラージュを持っていますが、日に当てずに保管しているので色あせていません。

デメリット2つ

作成に時間がかかる

A3用紙でコラージュを作成すると、どうしても50~60分程度かかります。

雑誌を1冊1冊見ながら切り抜きを集めるやり方ではなく、あらかじめ切り抜かれているものを見て集めるやり方だと少し早いですが、それでも絵画療法、箱庭療法と比較すると作成に時間が必要です。

雑誌を準備する必要がある

最低でも2~3冊程度の雑誌が必要です。購入するか、近所のカフェ等で捨てる予定の雑誌があれば、それをもらうのも1つの方法です。

コラージュの危険性について

「気になるもの」や、「なりたい自分」などのテーマで作る限り、危険性はありません。感情が不安定になることもないです。

ただし、「嫌なもの」をテーマに作る時は、心の体力をかなり使いますので、カウンセラーと一緒に作るのをお勧めします。

コラージュは危険なのでは?と気になる方は、まずは自分自身で作成してみたり、身近な方に作ってみてもらって下さい。シンプルに切り抜きを集めてそれを貼り付けるだけですので、危険も何もありません。

コラージュ療法の特徴

最大の特徴は、他の心理療法と比べて取り掛かる心理的ハードルが低い(取り組みやすい)点です。アートセラピーで絵を描くよりも、箱庭療法でグッズ選ぶよりも、気になった雑誌を切り抜くのは気軽にできます。なおかつ、既存の写真、イラストなどの切り抜きなので、作品自体満足感が高いものを作りやすいです。

まとめ

コラージュ療法は比較的新しい心理療法ですが、取り組みのハードルが低く、悩みや心の問題が無い状態でも自己理解を深められます。

作成したコラージュを見て心地良い感じがするのであれば、是非部屋の見える位置に貼るのをお勧めします。シンプルにテンションが上がりますし、見るたびに「なりたい自分」のイメージが刷り込まれるので、それに向けた行動にも繋がります。

コラージュ療法は、心の深い部分、大切にしたい事、今必要と感じている事、心の形やなりたい自分を目に見える形にすることができます。また、それを何度も目にすることで理想の自分を意識し続けられます。

やった事が無い方は、是非作成してみて下さい。

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  • この記事を書いた人

井上 隆裕

ジョイカウンセリングスクール代表。福岡にて心理学・コミュニケーションセミナー、心理カウンセリングを実施。2004年よりプロとして活動してます。プロフィール

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